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価格首位市場に見る和子牛の20年 潮目変えたスーパー種雄牛 近年人気は増体、成績高位安定

価格首位市場に見る和子牛の20年 潮目変えたスーパー種雄牛 近年人気は増体、成績高位安定

日本農業新聞は、独自に集計する「子牛市場ランキング」について、過去20年分の結果を分析した。取引価格上位の家畜市場の変遷を見ると、“スーパー種雄牛”の誕生によって、トップが目まぐるしく交代。近年は増体性や枝肉成績の「高位安定」が期待できる血統に人気が集中する。疾病、天災といった難局を乗り越え、国内外で和牛需要を拡大してきた産地の改良の歴史が見えてくる。

ランキング毎年変動

 同ランキングは、農畜産業振興機構(alic)が公表するデータを基に、全国の家畜市場での子牛取引価格や頭数を集計している。今回は2003年以降のデータを振り返った。

 取引価格上位の市場を見ると、05~07年は、増体や肉質といった遺伝能力の高さが際立つスーパー種雄牛の誕生によって、順位が毎年入れ替わる変動期となった。「平茂勝」人気で評価を高めた薩摩中央家畜市場(鹿児島)、「安平」産子が高値をけん引した宮崎中央農協家畜市場、「第1花国」を擁して前年の15位から一気に全国トップに駆け上がった青森県家畜市場が価格1位の座に就いた。

疾病克服、輸出拡大へ

 口蹄疫(こうていえき)の影響による頭数不足などが響き、10年以降は子牛価格の上昇期に入る。15年には、全国の平均価格が1頭当たり64万7489円と、当時の最高値を更新。一方、宮崎県内では復興に向けた取り組みが進み、一時ゼロになった母牛の頭数が発生前の7割まで回復した地域もあった。

 和牛輸出の拡大やインバウンド(訪日外国人)需要で、枝肉相場の好景気に沸いた14~19年は、「神戸ビーフ」や「特産松阪牛」といったブランド和牛のもと牛となる「但馬牛」を取引する兵庫県の但馬、淡路の2市場が価格トップを独占。20、21年は「白鵬85の3」の登場で高値を次々とたたき出した鳥取県中央家畜市場が躍進した。

 現状は、飼料高騰による肥育農家の経営環境悪化で、増体や枝肉成績に安定感のある血統に人気が集中する。

[解説]高値支える独自血統

 20年の間に大きく順位は変動したものの、安定した高値を維持してきた産地に共通するのが、地域の独自性の維持と、種雄牛の能力を引き出す母系の改良の積み重ねだ。

 兵庫、岐阜は数々の名牛のルーツとなる優良系統を輩出。上位常連の薩摩中央家畜市場の管内では、能力の高い雌牛の保留と、比較的短いスパンでの母牛の更新で、優良な母牛群を整えてきた。

 産地の改良の努力は今後も続く。「消費者の牛肉の好みは確実に変化している。さしの量だけではない脂の質や赤身のおいしさを求める実需や消費者の声を踏まえた改良も必要」(関東の食肉流通業者)との見方も強い。「和牛新時代」を掲げ、今後の改良の方向性を示した22年の全国和牛能力共進会でもテーマとなった「脂肪の質」や、最終的な消費を見据えた牛づくりが、次代の産地発展につながる。(斯波希)

引用:https://www.agrinews.co.jp/news/index/139780

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